左変形性股関節症 60代男性 障害厚生年金3級
概要
生後間もなく股関節脱臼。
発育性股関節形成不全と診断された。
5歳時、足の長さに左右差があることを気付いた親が病院に連れて行った。
当時の医者の判断は、今治療の必要性はないので、定期的にレントゲンを撮り、経過を見ましょうというものであった。
小学校~中学校までは病院に年1回受診し、経過観察を行っていた。
高校に入ると特に痛みなく生活に支障を生じる事が無かったため、受診する事なく過ごしていた。
社会人になってからも痛みなく過ごす事が出来ていたため、病院を受診する事はなかった。
平成16年頃、股関節に痛みがあり病院を受診したところ、変形性股関節症と診断された。
その後痛みがある度に病院を受診し薬を処方して貰っていた。
平成28年頃、股関節の痛みがあり受診した病院の医師から人工関節置換術の適応状態であると説明された。
手術を勧められ、同意。
入院し、左人工股関節置換術を受けた。
以後、現在に至るまで経過観察を行っている。
人工股関節置換術を受けた事で、股関節の痛みを感じる事はなくなったが、着替え(特に靴下を履く)、入浴中の浴槽をまたぐ時や足を洗う時等、日常生活動作に支障をきたしている。
また、正座や床に座ることが出来ない、落ちたものを拾うことが出来ない等の制限があり、様々な面で不便を感じている。
令和5年4月に障害厚生年金の請求を行う。
結果、障害厚生年金3級が認められた。担当者コメント
人工関節に置換された状態は、障害年金では原則3級に該当します。
3級は厚生年金にしかない等級ですので、初診日時点で厚生年金に加入されていない方(=障害基礎年金での請求になる方)は、障害年金の受給権を得られる可能性が低くなります。
請求人の場合、生後間もなく股関節脱臼が見られ、発育性股関節形成不全と診断されています。
ここが初診日として認定されると障害基礎年金での請求となり、等級不該当により不支給となることが予想されました。
そこで今回、社会的治癒を主張して平成16年頃、股関節の痛みを感じ受診した日を初診日として請求する方針を打ち出しました。
社会的治癒とは、社会保険制度上の請求者への救済制度です。
病状が社会復帰(通常の日常生活)可能な状態となり、かつ治療投薬を原則として必要としない期間が数年単位で継続した場合、再発受診日を請求上の初診日として取り扱うことが出来る法理を指します。
(参考記事:「社会的治癒」)請求人の場合も、高校生~平成16年までの約25年もの長期間、病院を受診しておらず、日常生活への支障もなく過ごしておりました。
上記経緯から、社会的治癒が成立する可能性は高いと判断。
提出書類には、社会的治癒に該当している事を証明するための資料を複数枚用意したうえで請求を行いました。
結果、平成16年を初診日とする障害厚生年金3級の支給が決定。
無事社会的治癒が認められて良かったです。